サステナブルでダイバースな旅~名古屋編~

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名古屋能楽堂のイベント

 この春3月には、名古屋青年会議所(JC)さんの企画で、久しぶりに名古屋に行ってきた。一泊二日の弾丸日程だった。

イベントのタイトルは、「世界に誇れるまち、NAGOYAを目指して」。

タレントの安田美沙子さんや、今や名古屋では知らない人がいないほど人気の名古屋テレビ塔ホテルのオーナーの藤巻満さん、声優の茉白実歩さんや地元の専門学校の生徒の皆さんと一緒に登壇。なんとイベント会場は、名古屋能楽堂。写真①能楽堂前

ちなみに、イベント前の控えの楽屋では、藤巻さんと同室。さっそく意気投合して、登壇前からおおいに盛り上がり。 イベント告知写真②

憧れの能舞台上での講演と、パネルディスカッションの司会を仰せつかった。名古屋青年会議所さんは、世界一の会員数を誇るLOM組織。団結力も半端ない。壇上からも、参加者の本気さが伝わってきて、会場は熱気に包まれていた。

名古屋市役所が行った都市ブランドイメージ調査結果では、全国の主要都市中最下位ということで、この現状打破に向けた戦略について、壇上で熱く語り合った。③グラフ

私は、名古屋の江戸時代にさかのぼった歴史の深掘りに基づいた観光おもてなし戦略を提案した。

イベント終了後は、舞台上にJCの開催関係者も勢ぞろいして記念撮影。 実にたのしいひと時だった。写真④集合写真

「有松(ありまつ)」訪問

翌日は、以前から行きたかった名古屋市内の「有松(ありまつ)」を訪問。

名古屋城をはじめ、名古屋の城下町は、太平洋戦争の空襲で焼かれて、名古屋の本物の歴史的景観は、ほとんどのこっていない。唯一江戸時代そのままの姿で街並みが残っているのがこの有松のまち(有松には、米英兵向け俘虜収容所があったため爆撃に遭わなかった)。名古屋のインバウンドの魅力発信上も重要な要素になるのではと思い、出かけることにした。

翌朝早起きして、名鉄電車に乗っていこうと考えていたら、うれしいことに、友人の青木裕典さんから車でのご案内を申し出ていただいた。(ちなみに、青木さんは後述する味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」5代目の若旦那)。写真⑤青木さん

 そして、さらに青木さんは、有松の有松絞(ありまつしぼり)で有名な「竹田嘉兵衛商店」のご当主とのアポも事前に入れてくれていた。さすが、若旦那!

竹田家の奥座敷は、ふだんは観光客が立ち入れない建物。呉服の展示会(招待制)開催中の最中。青木さんの事前アポのおかげで、視察させていただくことができた。

ここ有松の地は、江戸時代初期には人家の無い荒地だった(追いはぎなどが出て治安が悪かった)という。そこで尾張徳川藩は集落を作るために新住民を募り、1608年(慶長13年)東海道沿いに有松郷が開かれた。しかし、有松郷は丘陵地帯であるため稲作は望めない。また鳴海宿までの距離が近かったことからただの間の宿(宿泊機能は禁止されており、休憩のみの宿場町)としてだけではサステナブルではなかったという。写真⑥外観、

⑦有松のれん

そこで竹田家のご先祖の竹田庄九郎さんたちが、当時生産が始められていた三河木綿に絞り染めを施した手ぬぐいを、東海道を行きかう人々に旅の土産として売ることを発案して実行。これが大人気に。有松絞りの原点だそうだ。

尾張藩は、有松絞りを藩の特産物として保護し、やがて全国一の絞り染め産地として発展したそうである。

写真⑧竹田家ご当主と。

そうなのだ。有松は、宿泊機能のある正式な宿場町ではなかった(間の宿)。それがよかったのだ。宿場町は、明治時代になれば、鉄道に役割を譲り、町の本来の機能を失う。東海道の他の宿場町の跡を訪ねたことがあるが、どこも空っぽの建物か博物館的な文化財でしかない(生きていない)。

ところが、有松は違う。街並みがほとんど江戸時代そのままで残っていて、しかも今もそのまま有松絞りのお店として“生きている”。歴史が途切れることなく今とつながっているのだ。おお、まさにサステナブルなまち。「竹田嘉兵衛商店」のお茶室は、江戸幕府第14代征夷大将軍の徳川 家茂(いえもち)公が、京都上洛の際に、休憩のため立ち寄ってお茶を飲んだ場所。まさに家茂公がお座りになった場所でお茶をいただいた(無作法な姿勢で恐縮した)。この茶席も、今なおふだんから有松絞りのお得意さんに提供されているとのこと。この茶室は現役なのだ。おお、サステナブル!

有松のまちは、きっとこの後もずっとずっと現役のまま未来につながっていくのだろう。写真⑨茶室の私

ダイバースな味噌煮込みうどんの山本屋さん訪問

有松にもっとゆっくり浸っていたかったが、その日のうちに東京に戻らねばならなかったので、後ろ髪を引かれながら、青木さんの味噌煮込みうどんの山本屋さんに車で移動。

お店の味噌煮込みうどん注文後、お店のインバウンド戦略について、青木さんにお話を聞いた。青木さんは全国各地で食のダイバーシティについて講演している人なので、お話の論点が明確でわかりやすい。写真⑩青木さん

5代目として店に戻る前は、遠く中東や世界各地に日本の建機を売る仕事でしていたとのこと。その際ムスリム(イスラム教徒)の人々とも交流。彼らが、ハラール(イスラム食)しか食べられないことを知り、親しい仲間たちに自店の味噌煮込みうどんを食べさせたくて、ハラール対応のレシピ研究を始めたのがすべてのきっかけだとのことだったとのこと。

その後、インバウンドが盛り上がる中、先代や厨房の職人さんに、ハラール、ヴェジタリアン、ヴィーガン(完全菜食主義の人)、コーシャ(ユダヤ食)対応のダイバーシティ対応を提案。大変な苦労の結果、みんなの合意形成ができたとのこと。

写真⑪味噌煮込みうどん

お店のメニューには、ハラールフレンドリーポリシー、ヴェジタリアンフレンドリーポリシーを明記。できることはできる、できないことはできていないと明確に説明し、開示責任を果たすことで、食の禁忌(タブー)を抱えた訪日客に安心して食べてもらえるとのこと。

写真⑫ハラール対応

⑬ヴェジタリアン対応

さらに、驚いたのは、点字のメニューまで用意されていたこと。トイレはバリアフリー化されていた。食のダイバーシティに加え、食のバリアフリーにまで対応。すごい!ダイバース!

写真⑭点字

青木さんとの話は尽きなかったが、帰りの新幹線もあるので、ここでも後ろ髪引かれながら、名古屋駅にGO。帰京の途についた。新幹線の車窓からは暮れなずむ富士山が見えた。ラッキー。写真⑮富士山。

サステナブルでダイバースな旅の感想

あっという間の二日間だったが、心に残る旅だった。名古屋JCの皆さん、藤巻さん、青木さん、そして有松のまちの人たち、この後も、継続的に関わり合いたい方々ばかりだった。

旅先で出会い、意気投合して、そのあともずっとご当地の人々との関係性が持続していく。これがサステナブルな旅の第一義だと思う。CO2削減、プラスティック製品削減な旅だけがサステナブルなのではない。

旅先で出会った人々と、ずっと継続的にコミュニケーションが取れて、何回も何回も再訪していくような旅こそがサステナブルな旅だと思う。

そして、ダイバーシティ(多様性)の形容詞形のダイバースな旅。食の禁忌(タブー)を抱えた人々はもちろん、身障者や高齢者など、すべての人々を包摂しようと奮闘する青木さんの情熱に、私は今回改めて強く感化された。

ダイバースな対応こそが、サステナブルな旅を可能にするのだろう。食のダイバーシティは、すべての顧客のニーズに対応できるので、食べ残す必要がない。フードロス(食の廃棄)が必要なくなる。サステナブルだ。青木さんによると、ダイバースな対応によって、実に様々な国々から来店者が増えた、コロナ禍後も国内の外国籍のお客さんがやってきてくれるとのこと。サステナブルだ。

今回の名古屋への旅は、実にいろいろなことを考えさせられた。

名古屋のみなさん、本当にお世話になりました!ありがとう!!

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